30-27 華屋与兵衛とワサビの歴史
ワサビについて不思議だと思うことがいくつもあります。
ひとつは、子供の頃は嫌だったワサビの味が
大人になってからおいしく感じること。
同じ口が食べているのに、10年ほど経過しただけで
ここまで味覚が変わるものだろうかと考えてしまいます。
最近の回転寿司では、ほとんどのお店が
お寿司にワサビをはさまなくなっています。
小袋入りのワサビがレーンに乗って流れてくるので
それを自分で付ければ良いのですが、
やはり最初からワサビが入っているお寿司の方が魅力的です。
そして、「お寿司にワサビ」という発想が
どうして生まれたのかが気になるようになりました。
その組み合わせを思いついたのは華屋与兵衛、
1800年代の日本にいた寿司職人です。
今から200年も前の日本にはまだ十分な冷蔵設備が整っていません。
そこで華屋与兵衛が注目したのがワサビの防腐効果です。
ワサビが持つ味のアクセントが寿司と合っていただけでなく、
寿司ネタの劣化を防ぐ意味でもワサビは意味を持っていたのです。
1824年、東京の両国で開店した華屋与兵衛の寿司店には、
その味の良さからたくさんの人が集まっていたといわれています。
その場所には現在、東京都墨田区により
その歴史が記された“与兵衛すし跡”という案内板が立てられています。
刺激の強いワサビ入りの寿司を握って人々を笑顔にさせていた華屋与兵衛は、
新しい時代へと活気に満ちた日々を送っていたのでしょう。
令和の時代、回転寿司店のレーンに乗って
小袋入りのワサビが運ばれて来る様子を見せてみたい気がします。