30-22 バナナにまつわる祖父の口ぐせ
バナナを食べるたびに、祖父は毎回
同じ言葉を口にしていました。
「バナナはな、昔は高級品だったんだよな」と言います。
久しぶりに会う人へのお土産にしたり、特別な日に食べたり、
今のようにすぐ手に入るものではなかったそうです。
小さい頃の祖父が大喜びでバナナを食べる姿を想像すると
ほっこりした気持ちになります。
私もバナナの味が大好きなのですが、
味よりもその形と性質に魅力を感じています。
まずほかの果物に比べて、手を汚さずに食べられるところが好きです。
スルリスルリと皮をむくことが出来るので、
包丁を使う必要がありません。
まるで人間が改良してそういう形になったのではないかと
考えてしまうほどです。
性質に関しては、食べ頃を示す“シュガースポット”の
はたらきに驚かされます。
バナナを置いておくとジワジワ現れてくる、
黒い模様がシュガースポットです。
シュガースポットが出始めた段階だと
「甘くなってきましたよ」というサイン。
全体的に出たら「食べごろですよ」というサイン。
全体的に黒くなったら「傷んできましたよ」というサイン。
ほかの果物も皮の様子や色でそれなりに傷み具合が分かりますが、
バナナほど分かりやすくはないでしょう。
バナナを食べながら祖父のことをよく思い出しています。
祖父と食べていた頃も、子供と食べている今も、
おいしいバナナから幸せをもらっています。